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オリジナリティある味噌蔵を目指す、加藤兵太郎商店。

170年もの間、真面目に作られてきた変わらない味噌の味。

嘉永3年に創業し170年ものあいだ小田原の地で味噌蔵を営んでいる、加藤兵太郎商店。厳選された国産原料を使用し、創業当時から変わらぬ製法で味噌作りを続けている。

七代目・加藤 篤さんは、事業継承することへの葛藤があった。「最初は継ぐつもりがなくて。六代目の父以上のことができる気が全くしませんでした。」システムエンジニアとして8年働き、社会人としての自信が出てきた29歳で味噌蔵を継ぐことを決心。精神的に潰れてしまいそうになっても、社会人生活で鍛えられた分、身についた経験があったからこそ乗り越えられる部分が大きかったという。

「継承後、まず最初に取り組んだのはブランディング。商品が売りにくいと感じて、一年かけてパッケージを変更しました。手にとってすぐに魅力を感じるデザイン。重要なのは中身と相違がないということでした。やっぱり中身の味噌と明らかに違う雰囲気のパッケージだと違和感が発生するんですよ。僕の中でいい発見だったのは、パッケージにこだわると中の味噌にもこだわりたくなるということでした。」

見た目”だけ”にこだわる。そうならないように見直した生産過程で、ずっと変わらず続けられてきた味噌の製法に改めて気づいた。「すごく良い作り方をしてることが分かったんです。これは感動しました。とても真面目に作られてきたんですよね。味に関しては妙に美味しいなってずっと思ってたんです。でも美味しいのは馴染みがあるからとか、贔屓目があるからと思ってたんですけど、客観性を持って美味しいということに気づいたんですよね。そうしたら自信を持って味噌をすすめられるようになって。売りやすくなりましたね。自信を持って勧めることができるから、お客さんの反応もいいんです。ブランディングしようと思わなかったら、中身の良さにも気がつかなかったかもしれない。」

味噌の大量生産から機械化が進む中、加藤兵太郎商店では創業当時からほとんど作り方を変えていない。”こだわり”というより、”会社の色を残す”為の製法だという。「正直難しくて、お金があれば機械化しちゃうところもあります。でも、最近になって分かってきたのは、機械作りだと全部が同じ味になってしまって、面白くないんですよ。加藤兵太郎商店らしさを残す為にも手作りをし続けています。」

90年以上使われた木樽が、オリジナルの味わいを生み出す。

うす暗い味噌蔵に足を踏み入れると、粛然とする中で湯気が立ち上る。高さ2mほどの木樽がいくつも並び、どれも90年以上使用されたものだという。「木樽の日々の手入れは洗うことなんですけど、それが一番大変なんです。考えられない手間がかかってます。だからその辺を考えるとやっぱり合理的じゃないんだけれど。でもやっぱり木樽はものすごい価値があると思っていて、絶対かえるつもりがないですね。」木樽仕込みの職人が年々減少する中、木樽で仕込まれた味噌の生産量は全体の1%ほどだそうだ。

「基本に忠実につくること」を大切にし、日々味噌作りに取り組んでいるという。その「基本」とはどこにあるのだろうか?「手を抜ける瞬間ってものすごく多いんですよ。米麹作りの現場も洗いが十分じゃないと蒸しムラができたり失敗するんですよね。それを従業員はとにかくきっちりやってくれています。変えれるものはどんどん変えちゃうタイプなので、一時思ったこともあったんですけど、味噌作りだけは変えなくていいってもう分かっちゃったので。基本がしっかりしていたんですよね。僕ら若いのが色々変えたいと思っても変える余地がほぼない状態だということが分かりました。」

味噌の消費量はゆるやかな右肩下がりを続けている。国内外で発酵ブームと言われているが、若い世代が味噌を取り入れにくいことが理由の一つとして挙げられている。加藤さんは、次世代に味噌をどのように伝えていきたいと思っているのか。「難しい問題ですね。味噌にあまり新しい気付きってないような気がしていて。食べた方がいいよって押し付けるのはなんかちょっと違いますよね。当たり前のものでい続けられるように頑張っていくしかないと思います。」様々な食の選択肢がある中、何を選ぶのかは人それぞれ。味噌のない食卓があっても不思議では無くなってきている。「だけど、日本食には絶対必要だと思っています。食卓としては当たり前じゃないけど日本食という括りで言ったら絶対になくてはならない存在だと思います。」

『大切なのは秘伝の技より、基本に忠実に造ること』

加藤さんに、味噌の魅力を3つ挙げてもらった。「すごく合理的なこと言っちゃうかも。まず保存性がいい。実は味噌って安いんですよね。次に食卓に取り入れやすい。健康にもいいですし。あとは食育に非常に適していると思います。」
加藤兵太郎商店では不定期で味噌作りのワークショプを行なっている。親子で参加でき、自分の手で作ることで新たな発見と、作業の過程が学べるという。味噌作りの間、親子の会話も増えることで好評だそうだ。

「2416MARKETさんがどのように打ち出していくのかっていうところに期待しています。やっぱり自分で出張販売するのとは違う、効果の差が楽しみですね。神奈川に味噌蔵があることも、知らない人が多いと思うんですよ。驚きを与えられるのが楽しみなのと、しかもそれが若年層だっていうのがたまらなく嬉しいんですよね。」

加藤兵太郎商店
〒250-0001
神奈川県小田原市扇町5-15-6
IG: @iichimiso

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